土地活用会社からアパートやマンションの提案を受けると、建物の図面や建築費、収支計画書など、たくさんの資料を渡されることがあります。
「利回りは○%です」
「毎月これくらいの収入が残ります」
こうした数字はもちろん大切です。
ただ、土地活用の提案書を見るときに、私はいきなり利回りや収支の数字から確認するわけではありません。
私ならまず、図面を確認します。
なぜなら、どれだけ収支計画の数字が良くても、そもそもその土地に合っていない建物計画なら、その数字の前提から確認する必要があると思うからです。
この記事では、アパート・マンションの建築営業を14年間続けてきた私が、土地活用の提案書を見るときに確認しているポイントを、実務経験をもとに解説します。
※土地活用の計画は、土地の条件やエリア、建物の構造、融資条件などによって異なります。この記事では特定の計画を推奨するものではなく、提案書を確認するときの考え方を紹介しています。
土地活用の提案書をもらったら、まず図面を確認しよう
土地活用の提案書を見るとき、「まず収支計画を見る」という方もいるかもしれません。
もちろん収支は重要です。
でも私なら、その前に図面を確認します。
特に確認してほしいのは、
- 建物の構造
- 計画戸数
- 駐車場台数
です。
建物の構造を確認する
アパート・マンションには、木造、鉄骨造、RC造などさまざまな構造があります。
構造が違えば、建物の特徴だけでなく建築費も大きく変わります。
そのため私は、
「なぜ、この土地にこの構造で提案しているのか?」
というところから確認します。
構造だけを見て良い・悪いと判断するのではなく、その土地や計画規模に対して、なぜその構造が選ばれているのかを確認することが大切です。
計画戸数は妥当か
次に確認するのが計画戸数です。
土地にたくさん建てられるからといって、必ずしも戸数を最大限まで増やせばいいとは限りません。
どんな間取りを何戸計画しているのか。
建築可能な戸数だけではなく、実際の賃貸経営を考えた計画になっているかを確認します。
駐車場台数も確認する
特に車を必要とするエリアでは、駐車場台数も重要です。
建物の戸数を増やすことを優先すると、その分、駐車場として使えるスペースが少なくなる場合があります。
駅に近い土地と郊外の土地では、必要になる駐車場台数も違います。
そのため、
「この戸数に対して、この駐車場台数で大丈夫なのか?」
という視点で図面を見るようにしています。
図面を確認したら、次に収支計画書を見る
図面で「どんな建物を建てる計画なのか」を把握したら、次に収支計画書を確認します。
ここからは数字がたくさん出てきます。
でも、私が特に大切だと思っているのは、
数字の大きさだけではなく、その数字がどんな前提で作られているのかを見ることです。
同じ土地でも、家賃設定や金利、自己資金、将来の修繕費などの条件が違えば、収支計画の数字は変わります。
「毎月○万円残る」という結果だけではなく、そこに至るまでの条件を一つずつ確認していきます。
建物価格だけでなく「総事業費」を確認する
まず確認したいのが、建物の価格と諸費用です。
建物本体はいくらなのか
最初に、建物そのものの価格がいくらなのかを確認します。
アパートやマンションを完成させて賃貸経営を始めるまでには、建物以外にもさまざまな費用が発生します。
建物以外の費用が計上されているか
ただし、建物本体の価格だけで土地活用を始められるわけではありません。
例えば、
- 外構工事一式
- 地盤改良
- 造成・既存建物などの解体工事
- 設計・各種申請費
- 登記関係
- 融資関係
- 火災保険など
土地や計画によって必要なものは異なりますが、大切なのは、
「建物はいくらなのか」だけではなく、「この計画を実行するために最終的にいくら必要なのか」を確認することです。
会社によって見積書や提案書に含まれている項目が違う場合もあります。
複数の会社の提案を比較するときには、単純に一番安く見える会社を選ぶのではなく、何が含まれていて、何が含まれていないのかまで確認した方がいいでしょう。
まだ確定していない費用はどうなっている?
提案段階では、すべての費用を確定できるとは限りません。
例えば地盤改良費です。
実際に地盤調査を行うまで、地盤改良が必要なのか、どの程度の工事になるのかを確定できない場合があります。
私の場合は、提案時には近隣の地盤データを参考にして想定額を収支計画に入れています。
ここで確認してほしいのは、
「まだ分からないから0円」になっていないか
ということです。
自己資金と借入条件を確認する
金額が確定していない費用については、どのように想定しているのかを営業担当者に確認してみてください。
次に確認するのが資金計画です。
自己資金はいくらで設定されている?
同じ建築計画でも、自己資金をいくら入れるかによって借入額は変わります。
借入額が変われば、当然、毎月の返済額や手元に残る金額も変わります。
そのため、
「毎月これだけ残ります」
という数字だけを見るのではなく、
「自己資金をいくら入れた場合の収支なのか」
まで確認する必要があります。
金利は何%で計算されている?
建築の提案段階では、実際に融資が実行される時点の金利が確定していないこともあります。
そのため、収支計画では想定金利を使って計算する場合があります。
まず、
「この収支は金利何%で計算していますか?」
と確認してみてください。
金利が上昇した場合も考えられている?
さらに確認したいのが、将来の金利上昇です。
私の会社では、長期収支を作る際、5年ごとに0.2%ずつ金利が上昇する想定を入れています。
これはあくまで会社として設定しているシミュレーション条件で、将来の金利を予測できるという意味ではありません。
重要なのは、
「現在想定している金利がずっと続く」という前提だけで判断しないことです。
営業担当者には、
「金利が上がった場合、この収支はどうなりますか?」
と聞いてみてもいいでしょう。
家賃は「いくら」より「根拠」を確認する
収支計画の収入部分で特に重要なのが家賃です。
家賃が高く設定されれば、それだけ収支計画は良く見えます。
だからこそ、
「この家賃はいくらですか?」だけではなく、「なぜこの家賃なんですか?」
まで確認してほしいと思います。
家賃設定の根拠は何か
私の場合、家賃査定にはAIを活用した賃料査定システム「スマサテ」を利用し、その査定結果に準じて家賃を設定しています。
スマサテでは、賃貸物件のデータや類似事例、周辺のマーケットデータなどをもとに賃料を査定できます。
会社によって査定方法は違うと思います。
大切なのは、担当者の感覚だけではなく、その家賃設定にどんな根拠があるのかを確認することです。
「新築だからこのくらい取れます」
だけではなく、周辺の賃貸市場などをもとに説明してもらいましょう。
新築時の家賃がずっと続く計算になっていないか
もう一つ確認したいのが、将来の家賃です。
建物は年数が経過します。
そのため、新築時に設定した家賃が長期間そのまま続く前提だけで収支を見るのは注意が必要です。
私の会社では、エリアなどによっても異なりますが、長期収支では11年目以降、5年ごとに3%家賃を下げる設定をしています。
実際の家賃下落は、立地や建物、周辺の賃貸需要などによって異なるため、一律ではありません。
だからこそ、
「この収支では将来の家賃をどう想定していますか?」
と確認してみてください。
経営中にかかる費用が入っているか
賃貸経営では、家賃が入ってきてローンを返済すれば、残りがすべて利益になるわけではありません。
物件によって異なりますが、
- 管理費
- 固定資産税などの税金
- 共用部や外構の清掃費
- 各種点検費(エレベーターや浄化槽など)
- 共用部の電気代・水道代
- インターネット・防犯カメラ費用
など、経営を続けるための費用が発生することがあります。
収支計画を見るときには、
「毎年・毎月かかる費用がどこまで計上されているか」
を確認してください。
建物の設備によって必要な費用も変わるので、自分の計画では何が必要なのかを確認することが大切です。
修繕費は長期で確認する
新築時には見えにくいですが、長期間賃貸経営を続ければ修繕も必要になります。
私の会社では、ガイドラインに準じた計算式を使い、原状回復費と大規模修繕費をまとめて長期収支に計上しています。
会社によって修繕費の計上方法は違うと思います。
ここでも大切なのは、
「修繕費が入っているから大丈夫」と考えるのではなく、何を想定した金額なのか確認することです。
例えば、
「この修繕費には大規模修繕も含まれていますか?」
と聞いてみると分かりやすいでしょう。
家賃収入は何を前提に計算しているか
家賃収入についても、どんな管理方法や契約を前提にしているのか確認しておきたいところです。
自主管理なのか、管理会社へ委託するのか、一括借上げを利用するのかによって、オーナーが受け取る収入の考え方や費用、契約条件は異なります。
そのため、収支計画に記載されている家賃収入の数字だけを見るのではなく、
「この収入はどんな契約を前提にしているのか」
まで確認してください。
特に一括借上げの場合は、「入居率100%で計算されているから安心」と単純に考えるのではなく、実際の入居率とオーナーが受け取る借上げ賃料は分けて考える必要があります。
また、国土交通省もサブリース契約について、将来の賃料減額の可能性などを確認するよう注意を促しています。
借上げ期間だけでなく、借上げ賃料の見直し条件や修繕費などの負担についても確認しておくことが大切です。
「収支計画に書いていないお金」にも目を向ける
ここまでいろいろな費用について説明しましたが、私が提案書を見るうえで特に大切だと思っていることがあります。
それは、
「何が書いてあるか」だけではなく、「何が書いていないか」も確認することです。
例えば、私の会社の長期収支では、入居者募集時の広告費までは計上していません。
入居者が何年間住むのか、いつ退去するのかを事前に予測することが難しいという事情もあります。
ただし、収支計画に入っていないからといって、実際の賃貸経営で費用が発生しないという意味ではありません。
入退去が発生し、新しい入居者を募集するときには費用がかかる可能性があります。
これは自分の会社の収支計画についても、確認しておいた方がいいポイントだと思っています。
土地活用の提案書を見るときには、書かれている数字が正しいかどうかだけではなく、
「この収支計画には、どんな費用が入っていないのか?」
まで営業担当者に確認してみてください。
提案書をもらったら営業担当者に聞いてほしいこと
ここまでの内容を踏まえて、土地活用の提案を受けたときには、次のような質問をしてみてください。
- なぜ、この構造・戸数・駐車場台数なのですか?
- この総事業費以外に、発生する可能性のある費用はありますか?
- 金額が未確定の工事費は、どのように計算していますか?
- 自己資金はいくらで計算していますか?
- 金利は何%で計算していますか?
- 金利が上昇した場合、収支はどうなりますか?
- この家賃は何を根拠に設定していますか?
- 将来の家賃下落は収支に入っていますか?
- 修繕費には大規模修繕も含まれていますか?
- この収支計画に含まれていない費用はありますか?
全部を専門家のように理解する必要はありません。
むしろ大切なのは、分からない数字をそのままにしないことです。
質問したときに、なぜその数字になっているのかを分かりやすく説明してもらえるかどうかも、会社や担当者を判断する一つの材料になると思います。
1社の提案書だけで判断しなくてもいい
土地活用には大きなお金がかかります。
一度アパートやマンションを建てれば、簡単にやり直せるものでもありません。
だからこそ、最初に提案してくれた会社だけで判断する必要はないと私は思います。
会社が違えば、建物の構造や規模、建築費、家賃設定、収支計画の前提などが違うこともあります。
複数の提案を見ることで、
「この費用はどの会社にも入っている」
「この会社だけ家賃設定が高い」
「同じ土地なのに建物計画が全然違う」
といったことに気づける場合もあります。
大切なのは、単純に建築費や利回りだけを比較するのではなく、同じ条件で中身まで比較することです。
まとめ|提案書は「数字の大きさ」だけで判断しない
土地活用の提案書には、たくさんの数字が並んでいます。
でも、私が確認するときに大切にしているのは、大きく3つです。
1.その土地に合った建物計画になっているか
まず図面を見て、構造・計画戸数・駐車場台数などを確認します。
2.収支計画の数字がどんな前提で作られているか
建築費だけでなく総事業費、自己資金、金利、家賃、家賃下落、維持管理費、修繕費などを確認します。
3.収支計画に入っていない費用はないか
書いてある数字だけを見るのではなく、「何が含まれていないのか」まで確認します。
土地活用は、長期間にわたる事業です。
「毎月これだけ残ります」
「利回りは○%です」
という数字だけで決めるのではなく、
その数字がどんな前提で作られているのか。
そこまで確認したうえで、自分の土地に合った方法なのかを考えてほしいと思います。


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